ここ数年で加速したブライダル業界の変化を前向きに捉えている。「ドラスティックなチャレンジを行うには最高の機会。これまでも業界は変革の時をいくつも乗り越えて、新しい価値観、世界観を生み出してきました。今回の『進化』もむしろ楽しみです」。力強い言葉を支えるのは、祝宴がままならなかった時期にも「ときわで式を挙げたい」と待ち続けてくれた、多くの顧客の存在だ。長いインターバルを経て会場にあふれる笑顔を見た時、結婚式というセレモニーを守らなくてはと強く感じた。「従来のスタイルにとらわれず、お客様同士が楽しく喜びをわかちあう時間を何よりも大切にしたい。ときわのDNA である『感動』をベースに、クオリティの高い『楽しさ』を創造できれば最高ですね」。
ホテルでのブライダル業務を経験し、1993年入社。式場マネージャーなどを経て、2012年に執行役員、2017年から常務取締役。幸せに携わる仕事ならでは「いつもポジティブに」が信条。
執行役員になって４年。社内外へと視野を広く持ち、判断を下す機会を重ねてきた。「そろそろ『次の扉』を開くタイミングだと感じています」。半世紀を超える歴史を持つときわには、親子三代にわたる顧客も少なくない。「お客様は弊社に対し『伝統を守りつつ、変革を起こしてきた企業』というイメージをお持ちです。長年お付き合いのある方ほど、その期待が大きい」。新展開への挑戦は、これまで身につけてきた経験を総合的に生かす機会でもある。「新しく何かを立ち上げるにしても、現状を発展させるにしても、まずは各部門の連携をよりスムーズに。仕組みはもちろん互いを思いやる気持ちも大切にしたいですね。正直不安もありますが、今探している何かは、きっと自分にとっても新しい扉になる気がしています」。
「衣装のスペシャリスト」として活躍した後、マネージャーやブランディング部門を経て、執行役員に就任。役員として経営に携わる傍ら、部門間の調整や新人育成など、今もなお積極的に現場で動いている。
立場の変化に従い、ホールを見わたす視点も自然に変わった。「スタッフ個々の動きに気を配っています。トレーニングで身につけたスキルをいい形で生かすには、豊かなマインドが不可欠。お客様に応じた柔軟な接客ができるよう、飲食に限らず幅広い知識や経験を積んで欲しい」。段階的に成功体験を得られる仕組みづくりでサポートしながら、若手の成長に期待する。
一方、ノンアルコールバーやソーバーキュリアス（積極的に飲酒しないライフスタイル）の普及など、飲酒を巡る環境にも変化が生まれている。「どんな形・目的で利用される方にも心地良い雰囲気の醸成がこれからの課題。『ハーバー』の店名通り、お客様にとって港のような存在になるのが目標です」。名ソムリエによる名支配人への航海は、始まったばかりだ。
支配人を務める今も、現役ソムリエとして店に立つことに強いこだわりを持つ。そこには、標準化することが難しい接客の本質を、自らのサービスを通じて若手に伝えたい想いも。日本ソムリエ協会徳島支部支部長、同ソムリエ・エクセレンス。
結婚式への参列経験を持たないカップルが珍しくない時代。自社の強み以前に、挙式の基礎知識を説明することが増えた。「式をすべきかどうか迷っているというご相談さえありますが、私たちをブライダルのプロと見込んでくださってのこと。理解を深める好機と捉え、誠実な対応を心がけています」。キッチンやサービスのスタッフと意見を交わす時間も増えた。「式に携わるすべての部門と連絡を密にすることで、初対面のお客様にも、より具体的な説明や踏み込んだ提案が可能になります。自分一人ではなく、スタッフ全員でお客様に向き合っている感覚も心強いですね」。ディレクターに最も必要とされるコミュニケーション力。磨き上げたスキルで、日々新しい顧客とスタッフとの縁を結んでゆく。
衣装部を経てディレクター一筋。一番最初にお客様と接する立場としてプレッシャーは大きいが、ときわを選んでいただいた時の喜びや達成感の強さは、他では決して味わえないものと笑顔で語る。
満足度の高いプランニングのために、初回ヒアリングに2時間をかける。「お伺いしたいのは『ストーリー』。現在のお2人につながる物語を理解することは、本当に叶えたいスタイルを導き出すために必要な過程」。例えば同じ「感謝」でも、誰にどんな感謝の気持ちがあるのかは人によって違う。リクエストの多い「ゲストとの交流」の距離感もまた然り。言葉を表面的に捉えるのではなく、潜在的な想いを明らかにすることで、唯一無二の提案が可能になる。プランナーとしてキャリアを積みながら、結婚・出産を経験。ライフステージの変化と共に多様な視点を身につけてきた。「いつも自分自身に『いい結婚式って、何？』と問いかけています」。年齢や経験で答は変わる。だからこそ問い続ける。最高の答を求めて。
2019、2020年度の二度にわたり［GOOD WEDDING AWARDベスト50］に選出。今後は情報発信力をさらに高め、結婚式の新しい価値観やスタイルを幅広い層に伝えたいと考えている。
「多彩なご要望にお応えし、同時にときわの味とクオリティを保つことが私の使命」。婚礼料理はもちろん、その真摯さはテイクアウトのランチボックスや惣菜にまで及ぶ。新商品開発時に、家庭での再加熱まで考慮した試行錯誤を自ら行うのも「形態を問わず、お客様の信頼に応えてこそプロ」という意志の表れだ。
近年、最も刺激を受けたのが2020年スタートの「ときわ農園」。開設時にプロの指導を受け、土作りから収穫に至るすべての過程を体験することで、農作業への理解や素材への愛着が一段と深まった。「最高の一皿が完成するまでには、お客様と料理人だけでなく、多くの人が関わっていることを後輩たちに知ってほしい。そこにある想いをしっかり意識すれば、自ずと良いものが生まれるはずです」。
ザ・パシフィックハーバー、KITAHAMA Wを経て、2021年樫野倶楽部［別邸 風雅庭］料理長。「料理はお客様の気持ちを直接揺さぶる仕事」と、新郎新婦のリクエストに沿ったオリジナルなコース料理の創造を楽しんでいる。